6.9. 課題③『朝日新聞社』
違いを生み出すのは大看板や小細工じゃない。
ありきたりの日常への、あくなき探究心から生まれる。(何某)
さて、早いもので「菅付雅信の編集スパルタ塾」も講義5回目。
3つ目の課題は、まさかの 朝日新聞社 から。
「朝日新聞のリソース(コンテンツ・世界各国日本全国の取材網・宅配システムなど)を利用し、マネタイズできる新しいメディア(もしくはメディアビジネス)を企画せよ」
というもの。
なるほど、新聞社の現実は痛いほどよく知っている。
何より、今回の課題がこれまでのものと決定的に違う点。
それは、求められているのが ”マネタイズできるアイデア”であるということ。
ややもすると、経営コンサルとかビジネスコンペで課されるようなお題である。
これはいつもにまして、新聞社の現状と事業特性とをしっかりとらまえる必要がある。それらをしっかり踏まえた上で、斬新かつ建設的な提案が出来るかどうか。
いたずらに夢のある提案などあり得ないだろう。
夢やロマンチズムに拘泥していられるほど、いまの新聞社に余裕はないのだ。
ということで、まず、
・朝日新聞(新聞産業)の現状とリソースを洗う
・米メディアの現状とトライ事例
・ケイパビリティの有効的発揮および事業の選択と投資を検討
・なぜそれがなされていないのか。産業的、企業的、組織的側面から検証
以上を整理しながら、段々と意識させされたことがあった。
新聞社のみならず既存のマスメディア全てが、産業構造の転換を迫られている。
従来のビジネスモデルは長くは通用しない(あと10年は続かないだろう)ことがほとんど分かってきたからだ。それなのにチャレンジする風土や文化が育まれていない現状。
人間は50を過ぎると、途端に”変わる”ことに抵抗を感じるようになるという。
組織も同じだ。創業140年の会社が、カチコチじゃないはずがないのだ。
そのオールドメディアで働く若手が抱いている一番の懸念。
それは、
「結局この会社は変われないんじゃないか?」というもの。
激しい嵐に襲われ、荒れて朽ちていく自分たちの”家”を、
ただ見ているだけで何も出来ないのが現状なのだ。
ううぅ、これってトラウマになりそう。
そう、これは労働者のモチベーションに関わる問題なのだ。
以上より、今回の提案は、
トライ&エラーが出来る事業環境とプラットフォームを構築すること。
それこそが一番に念頭に置いたことだった。
誰も考えたことがないピッカピカの提案にはならなかった。
なりようはずもなかった、というのが正しいか。
提出後は、先行するアメリカの事例も踏まえた、より斬新な提案が出来なかったことを悔やんだりもしましたが、本件で初めて課題出題者による賞をいただきました。
菅付さんからは、「スマホキャリアを配っちゃうというのがこの提案の白眉。そこから得られる個人データやチャネルは建設的提案に繋がり得る」との講評をもらう。
手応えのあるアイデアは、第三者の創造力を刺激し、参加させることが出来る。
どんな提案も、100%詰めきらずに余白を残しておくことが重要であると改めて実感した。
追記として、
・在米メディアの現状とトライ
について、シカゴでメディアとジャーナリズムを学ぶ友人と長いやり取りをした。
5年は先を行っているアメリカのメディアビジネスだが、
「現状は、新しい事業やアプリを試しては止めしている試行錯誤は変わらず。BuzzFeed などバイラルメディアが新興する一方で、NYtimesもHuffingtonなど既存メディアは動画にシフトしつつあり、質の高い”ストーリー”を提供することで付加価値を高める狙い。ビデオプロダクションチームなんかを100人規模で雇い始めている」とのこと。
以上は、海外メディアと国内メディアの経営環境の比較も絡めて、別頁でまとめたい。