Book&Beer (&me)

ある受講者(菅付雅信の編集スパルタ塾−第三期−)の記録

9.8. 課題⑦「ゲンロン代表 東浩紀氏」

スパルツア塾は、いよいよ後半戦に突入の課題7つ目。

ゲストは、作家にして思想家・批評家で、ゲンロン代表の東浩紀氏。

お題は、「『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1』( ゲンロン)を参考にして、ダークツーリズムとは限らなくていいので、○○ツーリズムと課題を設定し、一般のガイドブックかのような外見を取りながら、思想的批評的にアクチュアルな問題意識をウイルスのように購読者に忍び込ませる観光ガイドを作ることを企画せよ」

 

ひええェ、さすが東さん、衒学的な出題してくんなー

でも、今回の課題に取りかかるのは、少し楽しみだった。

継続的な思考と、日常の視点切り替え。

こういうことが要求される課題ってのは、やっぱりおもしろい。

日々の生活の中で、この観点の問題意識をもって生きてみる。

そうやってすこしづつ点検しては、課題のコアに近づいていく。

それを自分に課すこと。

やる気になった奴だけ感じればいい、このプレッシャー。

嫌いじゃねーぜ。

ま、こまごまとした雑事に追われる毎日じゃ、たいがい忘れてんだけど。


仕事をスイスイミーと片付けたこの日、いつもより1時間早く下北に降りついた。

前回、B&Bスタッフの黒川さんに言われたセリフがふと脳裏をよぎる。

「なんか3期の方々、B&Bでビール飲まないですよねー。2期生はけっこう
飲んでくれたんだけどなー」

ほほう、そうかね。

そうなのかね。

 

それならおいら、今日は一杯飲んでから参上しちゃおうかな。

たまには酒でもかっこんでから勢いよく馳せ参じようと、

北口ガードをくぐったすぐ先のダンダカダン酒場に入り、餃子とビールを注文。


発表パワポをさかなに、一杯やるものまたおかし。
ここのギョーザ、メッチャうまかったです。


飲みながら、他の塾生に「いるよー。ぼくはここにいるよー」とアピールメールするも、誰からも反応がないので40分ほどで切り上げてB&Bへ向かう。



この日は、後期から参加する塾生も加わり、2階の本屋は活況を呈していた。

入り口で発表者の書かれた紙をもらうと、一番目に名前が。

キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!一番手!

一番手、キツイーーー。

特に、スパルタカスを地でいく東さんみたいな人にとって一番目の発表ってのは

「今夜どんだけサディスティックにかき鳴らそうか」みたいな様子見の時間帯に違いない、いきなり死んだーという被害妄想的な邪推を振り払い、みなの面前に立つ。


 



東さん、曰く「最初は結構いいのかなと思いました。しかし、、、
まずバブル建築というのと建築家の実験的建築というのは分けなければならない。
下手をすると建築家が造ったものは全部ダメで、ゼネコンが周りの人たちに聞いてなんとなく造ったものだけがいいとなりかねない。例えば、歴史的な町並みのなかに異様なデザインの建築があるという事例は世界にも一いっぱいあって、違和感を以て街との関係とを造っているというものもあるわけ。そういう視点がないとゼネコンがマーケティングで作ったデザインビルドな箱ものしか肯定出来なくなるので、そこをどう分けて作っていくかというのが大事なところ。じゃないと、建築家が作った建築は全部嫌いだよ、という大衆に媚びたものになる恐れもある。
 新国立問題だって、ザハの建築だから金がかかったのではなくて、そもそも金のかかる要請をJSCがやっていて、その責任が全部ザハに転嫁されたというのはほとんど明らかになっている。にもかかわらず、個性のある建築=悪だというそういう感情論にそのまま持って行くようなガイドになってしまったとすると、それはまさに俗情と結託しているガイドになってしまうという危険性があるなと思いました」
 
菅付さんからも、「作家主義的な建築というのはあって、いいものと悪いものがある。そこら辺の線引きはした方がいいと思う。例えば、ここは作家主義的だけど建築的に意味があって公共性もあって良し。ここは作家主義の悪しき部分である、みたいなどこかに基準がないと作家主義的なものの全否定になってしまうので、それが入っているか入っていないかで全然違ったものになってくるなと思いました」という講評をもらった。

もうほんとに仰る通りで、ぐうの音も出ませんでした。

まさにお二人にご指摘いただいた部分は僕も懸念として感じ取っていて、当日の発表では「しかしこうした視点が、個性建築狩りになってはいけないので、建築の歴史やトレンドを踏まえる必要はある」とは言い添えたものの、完全に焼け石に水、泣きっ面に蜂、のれんに腕押しのぬかに釘。ちょっとした小細工どころじゃ、どうにも軌道は変えられませんでした。

今回の受賞は、「ダークほどにヘビーではなく控えめな、“アッシュ(=灰)ツーリズム”」を提唱した男性。埼玉の武甲山や青森の猿ヶ森砂丘など、日常の延長線上にある身近な廃(墟)にフィーチャーした企画」
これは巧かった。そこかあ。そんな近く掘ったのかあ。
とまさに「山はそこにありや」。
感服のみぎりでした。
 
今回、東さんの問題意識やコアメッセージはやはり示唆に富んでいた。素晴らしい回だった。やっぱり大切なのは、「ちょっとズラすってこと」なんだ。